love/sick/sucks4


 あれから、一日と置かないで俺はカイルと関係を持っている。
 拝み倒す。泣き落す。お願いだよ、と縋りつけば、カイルは最後には、どうしたって首を縦に振る。
 それにあいつだってちゃんと感じてる。だんだんどうしたら、どこを責めたらあいつが悦ぶのかもわかってきた。思い通りの反応が返ってくると、俺の快感も倍増する。カイルが甘い声を漏らしたり、立っていられなくなって俺の背中に腕を回したりしてくると、なにものにも代えがたい多幸感が俺を征服する。俺たちの身体はすっかりお互いのために出来ているような気分になって、繋がっていないときのほうが嘘みたいに思えて、エンドルフィンが垂れ流しになる。

 カイルがセックスに応じる代わりに出した条件は、授業はさぼりたくないということ、ちゃんとオイルを使うこと、それから局部の負担を考えて一日に一度までということ。おしなべてこんなところだった。
 だから俺たちは主に昼休みに抱きあう。使われていない部室や用具室、ここならと思われる密室は大体他の上級生カップルで塞がっていることが多かったので、場所はもっぱらトイレの個室だった。それが叶わないときは晩にカイルの部屋まで押し掛けていく。
 あとの時間は敢えて距離を置くようにしている。だってランチのときだって、アーケードでゲームをしていたって、傍にいて顔を見たらジーンズの前が条件反射で苦しくなってきてしまうから。
 俺がべったりになって最初は喜んでいたウェンディも、長引いてくると女子には女子の付き合いがあるのよ、と俺を遠慮なく追い払うようになった。
 でも俺はできる限り長い時間を、ウェンディの傍で費やすべきだった。ともすればカイル一色になってしまう自分の精神のバランスをとるため、そして自分が『正常』だという自覚をもつために。
 ウェンディと俺は凡百の『ボーイフレンド』と『ガールフレンド』で、そこにはややこしいことややましいことなんかなにもない。凡百であるということは保険であり保証であり、大げさに言えば俺の未来を担保するものだった。

 カイルを避けていると畢竟ケニーやカートマンといつもの四人組になる機会も少なくなって、俺はそれを少し寂しいと思う。
 でも俺は、あの大雨の日に戻ってやり直しが効くとして、なかったことにしようなんて思わない。だってカイルとのセックスは、俺のちゃちな妄想なんかはるかに超えていた。
 ドラッグってこういうものだ。
 死に至るやつだ。間違いなく。合衆国が取り締まらないのが悪い。政府がカイル・ブロフロフスキーとのセックスを違法化してくれていたなら俺はこんなことにならずに済んだ。たぶん。きっと。もしかしたらあるいは。



 身体をへとへとになるまで動かすことは悪いことじゃない。今日はチアリーディング部の練習が休みだったのでカンに障る黄色い声もなくて、トレーニングに集中できた。オフシーズンのメニューは基礎練習の反復や体力作りが主で、元来面白いものじゃない。

 シャワールームを出たところで、クレイグたちがシャツの前も止めないまま固まって雑談をしていた。誰が誰を狙っているとか、そういうくだらない話。どんな弾みで出てきたのか分からない、クライドのせりふが突然ロッカー越しに俺の耳に飛び込んできた。
「ファーストキスが男なんて悲惨だからな」
 確かにそう聞こえた。聞き間違いじゃない。俺は上半身裸のままで声のする方へ飛び出した。
「な、なあ」
 いきなり話に割り込んできた俺に、クレイグたちの不審げな視線が集まる。俺は唇を舐めて、勢い込んで口を開いた。
「こ、これはさ、俺の知り合いの話であって俺じゃないけど。男同士はノーカンだろ?キスだって、セックスだって」
 トークンとクライドは顔を見合わせた。眉を寄せたトークンが、うーん、と唸る。
「キスはまあ、フライングって言い張れるかもしれないけど」
「流石にセックスしたならカウントするだろ」
 特におもしろくもなさそうに言われて、俺は思わずクレイグの襟もとを掴んだ。DUDE、とクライドの咎めるような声。正面から覗きこんだクレイグの目の色はまるで怯んでいなかった。
「何で怒るんだよ、マーシュ。お前の話じゃないんだろ?」
 クレイグの声は抑揚がなくて低くて、いつもとちっとも変わらないのに、俺は死刑を申告されたような気持ちになった。