「最近スタン付き合い悪くねえ?」 スコープを片目で覗き込みながら発されたカートマンの言葉に、僕は頷いた。三人だと対戦するにしても別行動するにしても不都合が多いんだ。 「ウェンディにひっついてるみたいだけど、なんか様子がおかしいよね」 カイルは無言で画面の標的を撃ち続けていたけれど、肩がどんどんいかってきたから、すぐに察しはついた。 「ばか、そこアイテム取れって、あ、あーあ」 ガッデム、とカートマンが吠えて、ほどなくして画面にゲームオーバーの文字が現れる。 コインの投入を促すグラフィックに切り替わったタイミングで僕は聞いた。 「カイル、スタンと喧嘩したの?」 「……喧嘩ってわけじゃないけど、」 カイルにしては歯切れが悪い。カートマンも眉をよせ、ガンを画面正面のホルダーに戻した。 僕たちは匡体のサイドに移動して、カートマンと僕で挟むようにカイルを覗き込んだ。 「わけじゃないけど、何?」 カイルは大きく溜息を吐いた。それから壁にもたれかかるようにして腰を落とした。 ぼそぼそした話を簡潔にまとめると、スタンとセックスするようになったと。気恥ずかしいのか学校では距離を置かれていると。こうだ。 絶対に『キモイ』、続いて『ファグ』、と来るだろうと予想されたカートマンの口からは意外なコメントが出た。 「なんで?お前それで黙ってケツ貸してんの?」 「うるさいなー」 カイルは蠅でも払うように顔の前でひらひらと手を振って、それから帽子の耳あてを両手で握った。 「だって泣きつかれるんだもん。渋るとこの世の終わりみたいな声出して、お願い、お願いってさ。他でもないスタンだし。減るもんじゃないし。僕だって痛いばっかりじゃないし」 「じゃあセフレってこと?」 僕のまっとうな疑問に、カイルはうーん、と首をひねった。 「そう呼ぶのかな。でもスタンがどうなりたいのか、僕がどうなりたいのかもわかんないんだ。全然割り切れてないけど、ぐずぐず気に病んでるわけでもない。自分でもこんがらがってる」 僕は肩を竦めた。僕の快楽主義とはまた別の論理らしい。セックスは好きだけれど、それに何がしかの意味付けやややこしい感情を持ち込まれると途端に僕には理解不能になる。 ケツ切れない?だとか、腹壊さない?だとか、下世話だけれど妙に具体的な質問責めをした挙句に、カートマンは鼻を鳴らした。 「スタンの野郎最低だな」 「カートマンが僕の肩持つなんて珍しい」 カイルは思いきり訝しげな目でカートマンを見た。僕も同感だ。 「だってこの場合は明らかにつっこまれてるほうがワリ食ってるだろ。ギブした分はテイクしてやれよ。ちゃんと代償を払わせるべきだ」 呆れたようにカイルが言った。 「それってビッチの発想じゃん」 「はあ?」 カートマンは思いきり顔を歪める。 「キスさせてやるからあれして、セックスさせてやるからあれ買って、ってさ。別に僕はスタンから何か欲しいわけじゃないもん」 「あーそうかよ、おめでてーな」 カートマンはむーしむーし、といういつものアレをやって、慌ただしくゲームセンターから駆け出していった。残された僕とカイルは顔を見合せて、丁度順番が空いた新作の匡体のほうに移動した。一対一になったからやりやすい。 |