砂利を鳴らしてこちらへ近づいてきた局長に、何か指令かと思ってインカムを下げると、 「山崎、コレ」 「へ」 何かを差し出すものだから変な声が漏れた。 「おすずさんから。隊士の方たちにも、ってたくさんくれたんだ」 差し出されたのはかわいらしい包み。ピンク色の薄紙に包んであるのは洋菓子の類だろう。 オレは反射的に受け取って、どうもと礼を言う。 「彼女、家まで送ってくる。すぐ帰るから、ここ頼むな。」 ひらひらと手を振り背中を見せる。テントから姿をあらわした彼女と連れ立っていくのを見送って、肩を軽くすくめる。 本当は現場に一般人を出入りさせるなんて望ましくないのだけれど。局長には一応進言をしたものの、ちょっとだけだから勘弁、などとはぐらかされてしまっ た。 あまりに陳腐な出会い、積極的なアプローチ。 すわスパイかと疑って裏を取ったけれど、地下組織や政治結社とのつながりはどこにも見つからなかった。なので単純に、局長の嫁になりたいクチなのだろう。 まあちょっと変わった趣味ではあるけれども、局長だって組織の長、人徳も人望もあるし地位も、実は見た目もそう悪くはない。ワイルドとかいくらでも言い回しはきくし、ストーカーなどの奇行さえなければ、っていうかむしろ黙ってればいいんだあのひとは。 今まで言い寄ってふられているところばかりを見てきたから、多少違和感はあるものの、結婚相手に選ぼうという女が出てきたって不思議はない。 ただ。 あれは思いの外したたかな女性だ、と思う。 局長に取り入るにはほかの隊士ごと懐柔するのが得策だということをわかっている。局長が仲間思いで、彼に嫁入りするということはひいては組ごと世話をやかなきゃならないということも。大人しく見えて、そのあたりの器用さや度量も持ち合わせているようだ。 大体の隊士は単純極まりないので、きれいなお姉さんには鼻の下を伸ばすし優しい声をかけられれば好感度もあがる。ただしそう一筋縄じゃいかないのがすぐ下の二人。 沖田隊長と副長はまったく介さない、相手にもしないどころか無視を決め込んでいるようで、そのあたりに彼女が苛立ち、といかないまでも不興を覚えているのを察している。 特に副長が酷い。間ではしゃいでいる局長はなにも気づいてないようだけれど、不機嫌も度を過ぎると無口になるのを知っているオレは正直、彼の傍では生きた心地がしない。 計器がカタカタ鳴るのにはっとした。 気を取り直してインカムを戻し、吐き出された電信票に目を落とした。 090510 |