この公園に仮設のテントを張って一週間。屯所の電算室と連携してここから各拠点に指示を出したりしているが、ちっとも進展がない上俺たちの裏の裏をかくようなところで犯行が行われるので、現場の士気も下がりっぱなしだ。 「お仕事お疲れ様です」 野太い声ばかりの響く場所にそぐわない高いソプラノに俺はびっくりして席を立った。 顔を出したのは他でもない彼女だった。 「おすずさん、外は危ないって」 「いいえ、危なくありません。近藤さんが一緒ですもの」 えくぼを作って笑う、彼女は本当に天使みたいだ。 ふわりとウェーブのかかった肩につくくらいの栗毛。頬には赤みがかっていていかにも可憐だ。 思わずやに下がってしまう。 「差し入れ作ってきましたの。お口にあったらいいんですけれど」 「いやいや、かたじけないです」 慣れない履物で靴擦れを起こし難儀していた彼女をおぶって家まで送ったのが始まり。彼女がその後わざわざ屯所にお礼に来てくれて、それで外でもたびたび会うようになった。 年のころは俺より二つ三つ下ぐらい。かわいらしい中にも大人の女性の落ち着きがあって、立ち居振る舞いも楚々として上品。 「これ、みなさんにも」 ちゃちな長テーブルの上に風呂敷を解くと、中から色とりどりの包みが現れる。傍にいた隊士連中がわっと群がった。ぴりぴりしていた空気もいくらか和む。 不規則で無茶の多い、この仕事のことも理解してくれていて、本当にこれ以上ないぐらいの女性だ。おまけに毎回組の連中のぶんまで差し入れを作ってくれて、若い隊士なんか舞い上がっちゃってる。 料理も上手で、マメで、いつも笑顔を絶やさない。 俺は思った。今度こそ運命の相手だと。 今までの長い長い回り道は、全て彼女と会うための前座だったんだ。 こんなこと滅多にないから、舞い上がって有頂天になってしまっていたけれど、 このヤマが片付いたら。そうしたら正式にプロポーズしようと思う。 090510 |