「やだやだ!!そんなとこに行っちゃだめナリよ!!」 裏口のところで飛びかかってきたトッシーにはがいじめにされて、俺の夜遊び計画は水泡に帰した。 「あー、残念っした」 「そんじゃ局長、俺らはこれで」 原田や永倉はそんな俺を尻目に、足取りも軽やかに脇をすり抜けていく。 彼らの行く手にピンク色のネオンが霞んで揺れる。 「ううッ」 俺は背中にへばりつく体温を恨めしく振り返った。眉を八の字にしたトッシーと視線がカチンとぶつかる。 今日こそはイケると思ったのに。苦虫を噛みつぶす。 責任を取る、などと安請け合いして以来、トッシーは全力で俺の生活を拘束しにかかった。彼女気取りなんてもんじゃない。女房通り越して背後霊だ。 『ダーリン』呼びは辛うじてやめさせた。いくら俺でも体面というものがある。 「怒ったナリか?」 顔を覗き込んでくるトッシーに、不機嫌そうな表情を作った。 「俺にだって局長として付き合いってもんが」 わざとらしく唇を尖らすと、トッシーも張り合って金魚みたくふくれる。 「ごまかしたって知ってるナリ。えっちなおねいさんのいるとこでえっちなことするつもりだったでござる」 「ぐ」 否定出来ない。トッシーは言葉を詰まらせる俺の首におもむろに手を回し、膝に乗り上がってきた。 「よそにいっちゃイヤでござる。僕がなんでもするからァ」 子供のように首を傾げてそんなことを言うものだから、俺の中のいじめっこがむくりと頭を擡げた。 「ほんとに?」 夜のお楽しみを邪魔されてむしゃくしゃしていたのもあるけれど、決してそれだけじゃない。俺の中のどうしようもない部分を育てる何かが、こいつにはあった。 「んぐ、う、」 「ほら、もっと全体使って」 必死で舌を這わすけれどどうにもぎこちない。 「そう、根本から」 焦れったくて後頭部を掴んで、奥の柔らかい部分を突く。 酷く苦しそうな吐息が漏れるのにも構わず、自分のいいように出し入れを始める。 「ふ、うッ」 苦痛に耐える真っ赤な目元を眺めていたらほどなく腹からぞくりとしたものが這い上がってきた。一番奥で留めて、思う様ぶちまける。 「…く、」 同時に衝かれたように頭が剥がれ、溺れた人間みたいに激しく噎せた。ぱたぱたと飲み込みきれなかった精液が畳に零れる。 「げほッ、えうッ、…ぐ」 顔をぐいと持ち上げて、頬で囁く。 「ちゃんと舐めろよ?」 彼は涙を溜めた目をすがめてこくこくと頷いた。導かれるままに頭を垂れて床に舌を這わせる。 自分の唇の端が厭らしく歪んでいるのがわかる。こんな悪趣味な嗜好なんかなかったはずなのに。ぼうっとした頭でそんなことを考えたけれど、肚を占める欲望はちっとも萎えてくれなかった。 「自分で拡げとけ」 は、と苦しそうに息を吐いて、震える指先が指示に従う。 それからお預けを喰らって飼い主の情けを待つ犬みたいにこちらを見上げてくる。 腿裏に手を回し菊座を暴く、こんなに屈辱的な姿勢を取らせても、瞳を潤ませあえかに喘ぐばかりでまるで従順だ。 「ふあ、あ」 涙でぐしゃぐしゃの顔が、腰を打ち付けたら更に歪んだ。 入れたままキスをすると中がぞわりと収斂する。 「…き、すき、ぃ」 熱に浮かされたような舌っ足らずな喘ぎを、もっとひっくり返らせたくて乱暴に動く。しがみつこうとするのに腕が上手く背中を掴めなくて、何度も宙をかく。 不器用な仕草と身も世もない声。まるで別人とセックスしているみたいだと、真っ赤になった頭で思った。 丁度いいところに。俺は腕の中の書類を抱え直して早足になった。 慣れた煙草の匂いを嗅ぎつけて、執務室のドアを開ける。 室内に案の定、トシの背中を認めて駆け寄った。 「あ、トシ」 「なんでござるかっ」 振り向いたのはトッシーの方だった。 はしゃいだ声を出すトッシーの手には既に煙草はなく。咄嗟に床に目を走らせると絨毯を少し焦がしていた。取り落としたと思われる煙草を慌てて拾って、灰皿に押しつける。トッシーはきょとんとして俺の方を見ている。 俺は増幅する違和感に眉を寄せて瞬いた。そういえばもう一週間も、あいつと話をしていない。 070913 |