たいむましんうぃーく・2


子ども扱いするなと怒る割には、やはり今のトシに比べれば随分と素直で単純だ。武州時代からいる連中にからかわれつつも、見るものみな珍しいらしくパソコンや携帯電話やらにもいちいち驚いてこれはなんだどう使うんだと質問責めにする。
休憩室でハイビジョンのテレビに釘付けになってしまったので、これ幸いとワイドショーにお守りを任せることにした。

トシに代わって例の商品の廃棄を山崎と打ち合わせ、取り急ぎとっつぁんに報告をして、ついでに年度代わりの顔合わせなども済ませて帰ればもう八時を回っていた。

食堂で簡単な食事を済ませた後、休憩室を覗いたがトシの姿は無かった。
「あれ、トシは?」
せんべいをかじる斉藤が、画面から目を離さずに答える。
「ゴハン食べたらもう寝るって部屋に戻っちゃいましたよ」
「もう?」
「いいとこなんで黙れって」
藤堂にぴしゃりと云われてウン、と返事をした。まあ武州にいた頃は俺たちみんな早寝早起きだったもんな。寝る子は育つ。いいことだ。


トシの部屋の電気は消えていた。しかしその脇、俺の部屋にうっすら灯りがともっている。まさか、と思いながらえいやと戸を引くと、
「おかえり」
浴衣一枚のトシが、俺の布団の上にちょこんとのっていた。膝から脱力しそうになるのを堪える。堪えて。ここはオトナの顔で。
「ここ俺の部屋。トシの部屋はあっちですよ」
隣の部屋を指差すが、トシはけろりとして応えた。
「知ってる」
「もう一人で寝れるでしょ!あ、怖いテレビでも見た?」
首を傾げればトシは鼻を鳴らした。
「ヤボ言ってんなよ」
腕を引かれてバランスを崩し、布団に膝をつく。あぐらをかけばその上に乗り上げてくるからだが一回り小さくて、なんだかもやもやした気分になる。顔を歪めて控えめに押し返した。
「ちょ、なんか犯罪ぽいから、その」
ていうかこの頃ってもう身体の関係あったっけ?
「お、俺まだ手出してなくない?」
トシは頬を膨らませて眉を吊り上げた。
「先月バージンあげたじゃんか。それからはそりゃあもうサルみたいにいつでもどこでも」
「わーー」
忘れてた。てゆうか忘れたい。若かったんだ。しょうがなかったんだ。とはいえこれから先十余年に亘ってこんなふうに責任を取らされることになる覚悟なんかなかったとしか思えない。あああああ畜生あのころの俺め。

顎や頬に短く、何度も口付けてくる。つたないキス、これで誘惑してるつもりなんだろうか。さすがお子様。
「ほんとにすんの」
及び腰の俺に、トシは上目で媚びるように首をかしげる。
「してくんねえのかよ」
甘えたように言われれば弱い。尖らされた唇に観念して、そっと顔を寄せる。
「ふ、ぅむ、」
ずるりと差し込めば怯んで、奥に逃げる舌を追いかける。煙草の匂いのしない唾液が新鮮で、粘膜を絡ませ、吸い上げ、襟足をいじってやればすぐに火がつく。
感じ入ると首っ玉にしがみついてくるクセは今でも変わらない。回された腕がいつもより細い。襟を抜けば露になる肌には傷痕もずいぶん少ない。日々走り回って灼けた健康的な肌色。罪悪感で萎えそう。
俺の葛藤なんか察しもしないで、トシは気持ちよさそうに鳴いた。

下帯を押し上げている性器を布越しに撫で、反対の手で逃げそうな腰を宥めながら内股を割る。布団の脇に出しっぱなしの薬箱を探って軟膏を掴み、片手で蓋を開けた。中身をごっそりすくって下帯の脇から侵入し、あやす様に竿を軽く愛撫する。掌で陰嚢をゆるゆると弄い、周りをくすぐるようにしながら後腔を暴く。
「ふああ」
まだ熟れきっていない蕾を傷つけないようにと入り口をつつくように叩けば、甘い声を上げていたトシが、急に首をぶると振った。
「そんなゆっくり、や」
「え?」
何かいやだったのかと指を止めれば、じれったそうに眉間を寄せる。
「いつももっとすぐ、入れる、じゃんか」
自重しろ十二年前の俺。
「痛くしちゃうから、だーめ」
もう大人なんでそんなことしません。第一ちゃんと慣らさないと後が辛いのお前だぞ。
「い、から、痛いの、最初だけ、」
「はいはい。いい子にしてろよ」
時間をかけてひとつずつ間接をもぐりこませる。トシの腰がびくびくと跳ねるけれど、がっしりと両手で押さえているから逃げられない。
「やだ、や」
抵抗のつもりなのか、ゆるく宙をかく足首を捕まえれば涙目で睨んできた。
「おっさんになったからって、余裕みせやが、って」
頬を真っ赤に上気させて毒づかれたって怖いものか。
「ひゃ、」
掛け布団の厚くなったところに背中を転がし、しげしげ眺めれば、性器もそれに続く蕾も二十代のトシより若干色が薄い。ひだの数も多い気がする。自分はどれだけこいつの身体を開発しちゃったんだろうと思うと、本人が望んだこととはいえ申し訳ない。
切れてしまいそうだったら指でいかせるだけにしようと思っていたが、それも杞憂のようだった。当たり前だけれど感じる場所は同じだ。人差し指と中指で内から刺激してやれば声が引き攣る。もう限界らしく、絶え絶えに早くと急かすトシに圧し掛かった。
「あ、あーッ」
当たり前だけれどいつもよりきつい締め付けの中、雁が前立腺を掠ったところでトシが悲鳴を上げた。ああ出ちゃったか。
「トシ、大丈夫?」
内部の痙攣に暫し俺も呼吸を整える。白濁を吐いて震えるそこを覗き込むけれどまだ萎えてはいない。さすが若いだけある。
「ふ、ぅあ、」
耳まで真赤にしながらあくあくと口を開く。伝う唾液を母指で塞き止めた。ひくひくと蠢く内壁に促されて、ゆっくりと律動を開始してやる。
「すご、おっき、あ、」
そうか、俺も十二年前より若干サイズがでかくなっているわけか。そう思うと細い裸身を組み敷いているのもなんとなく居心地悪くて、繋がったまま自分の腰の上にトシの身体を引き上げた。
「ひゃあ、あ」
角度が変わったのが善かったらしく、弾みでトシの性器からどぷりと零れる。
「う、うふ」
ゆるやかに束ねた髪が頭の後ろで、馬の尻尾みたいに跳ねるのが可愛らしくて、調子に乗って下から突き上げた。喘ぎ声がいつもよりも鋭く鼓膜を衝く。
襟足に垂れる黒髪だけやたらと艶っぽい。汗を含んだそれを指の腹で撫でるのに夢中になった。




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