溜息とメリークリスマス・3(コノハナ作品)


結果として待っていたことは、当然の報いと言えば言えなくもないような事態だった。

投げつけた岩で山崎が負傷。
たまたま足の上に落ち、右足の指の骨を骨折。

固定すれば歩く事に支障はないらしいが、腫れが引くまでは痛みで立ち上がることもできないらしい。医者の言葉を鵜呑みにするわけではなかったが、やはり今すぐ歩き回れというのは無理だろうと、山崎の顔を見て判断した。

そもそもミントンをしていたこいつが悪い、と言いたいところだが、実際はミントンをやっている沖田と志村家に向い走っていた山崎という取り合わせだったらしい。

俺が投げた岩は沖田に当らず、走っていた山崎の足に落ちた。山崎を使う事になった事情を知っている沖田は、獲物を前にした猫のような顔で俺を眺めている。

「どうするんですかぃ?これでも山崎は組で一番の腕っききだってぇのに」
「…分かっている。しばらくの自宅休養を許可、ついでにその間の手当くらいは出してやらぁ」
「そんな金、この貧乏組のどこにあるって言うんですか」
「……俺の給料から天引きだ」

沖田の策略に見事に載せられた気がしたが仕方がない。
山崎は運び込んだ先の医者の家に残し、勝手にあとからついてくる沖田を従えて屯所に戻った。そもそも、医者に運び込むときに手伝いすらしなかった奴だ。それ以上話し掛けられても無視するつもりで、鍔に手をかけたまま帰路を急いだ。

「ねぇ、土方さん。困ったことになりやしたねぇ」
「…………」
「近藤さん、報告待ってるだろうなぁー。そわそわしてる姿がこの沖田の目にも浮かぶくらいでさぁ」
「…………」
「どっかの誰かさんは、ここの分の埋め合わせをどうしてくれるんでしょうねぇ。ちょっくら近藤さんのところにでも行って…」
「上等だコラ」

沖田が言いたい事は分かった。
つまり、山崎が受け持つはずだった志村妙の探索を俺にやらせたいのだろう。

そんなに俺の惨めな姿が見たいのか。刀に手をかけたまま振り返ると、さも嬉しそうな顔で沖田が笑った。

「それでこそ、男ってぇもんですよ。土方さん」
「何が楽しい?」
「おや、楽しくありませんかい?」
「ぶった切ってやろうか」
「まあそう怒らずに。その間の理由はこの沖田が繕っておいてあげますよ」
「…フン」

それ以上相手にする事なく、歩き出した。

このまま真っ直ぐ組まで戻る気分はいつの間にか失せていた。探索は明日からやるとして、今夜は酒でも飲んで気を晴らすしかない。

やはり嬉しそうに後からついてくる沖田を撒くのも面倒になり、酒場はスナックお登勢にした。あそこのチャイナ娘と沖田は相性がいい。身体能力が似通っているせいか、手加減もなくじゃれつく相手を目の前にすると延々それで遊び続ける。

そういえばどうして沖田がずっと俺達の側にいるのか、いままで一度も真面目に聞いた事がなかったのだと気がついた。面倒で今更なので、やはりこれから先も聞く事はないだろう。

夜のかぶき町は、クリスマス色をした華やかなネオンで満ちている。

新しい煙草を買うと、ポケットに入ったままだったゴミを背後をついてくる沖田に向い放り投げた。嬉しそうな笑い声が聞こえ、鍔鳴りの音が鼓膜を揺らす。真っ二つに切られた紙クズを踏みつけ、俺は場末のスナックの戸に手をかけた。