山崎が辞して玄関の扉が閉まるのを見届けると、俺は玄関に通じる障子をそっと閉めた。 「トシ」 短い呼びかけに、こちらを仰いだトシはぼうっとした目をしている。 俺は車椅子に合わせて屈み、耳元で尋ねた。おれを、 「恨んでいるか」 囁くような声にトシはゆっくり瞬いて、それから小さく首を振った。俺はとびきり優しい顔をしてやる。 こいつから根こそぎ奪ったのは俺だ。抜け殻のようなこいつに、けれど俺は同情する気にはなれない。だって悪いのは俺を捨てようとしたこいつなのだから。 あのとき俺の頭は自分でも驚くほど冷静に動いた。どのように動けば上手くやりすごせそうか、瞬時に思い巡らし、細工をした。凶器の割れた鉄パイプは目論見どおり川で上手いこと洗われたようだ。 トシが誰に斬られたか云わなかったのは何故だか知らない。とくべつ知りたくも無い。この状況で俺を敵に回しても得策ではないと判断したのか、それとも刀を手放さねばならないことに絶望して自棄になったのか。どちらにしても俺には関係の無いことだ。 仕事も、生きがいも、声も、足も。彼から全てを取り上げた自分の傲慢さを、けれど俺は恥じもしない。罪悪感も無い。 こいつは根こそぎ俺のものなのだから、どうしようと俺の勝手だ。 車椅子の背の部分と、膝下に手を入れれば、トシはバランスを崩すのを怖れてか俺の胸元にすがり付いてきた。そのまま持ち上げて、身体を畳に下ろしてやる。ギプスで固定された片膝はまだ上手く曲がらない。 トシは少しだけ心細そうな表情になって俺を見上げた。本当にこいつは俺を煽るのがうまい。 後ろ髪を梳いて襟足を掴む。こわばった瞬きに笑いかけるとそっと顔を寄せ、噛み付くようなキスを仕掛けた。 「う、う」 驚いて撓った背中を、左手で強く抱き寄せる。喉の奥までじわじわと、音を立てながら舌で侵していく。ねっとりとした愛撫のキス。容赦なく舌の根を吸い上げ、歯を立て、口蓋をくすぐる。 唇を離す頃にはトシの頬は赤く上気していた。俯いた口の端から糸を引いてぽたりと涎が垂れる。 力の抜けたトシの身体をうつぶせに横たえ、後ろから覆いかぶさるように抱き込む。怯えたような視線をこちらにちらちらと遣すのに可笑しな気持ちになる。未通女でもあるまいに、これから何をされるかわからないわけでもないだろう。 舌を耳朶に絡ませ、ちゃぷちゃぷと卑猥な音をわざと立てながら、今度は後ろから着物の裾をたくし上げた。 「うあ、」 拒絶に強張る身体、俺を跳ね除けようとする弱弱しい肘を無視して、太ももをゆっくりすりあげる。筋肉が落ちて少し痩せたようだ。声音と背中の揺れで、感じていることは手に取るように判った。 尻たぶまで到達すると、両脚の間に自分の膝を割り込ませる。下帯越しにすくうようにして触れた性器は、もうすっかり形を変えて張り詰めていた。ふぐりもずしりと重くなっている。臍下まで手を回せば、布越しでもわかるぐらいに湿っている。 からかうように指先で亀頭をくすぐってやる。トシの発する唸りは引きつり、息はせわしなく上がる。俺は片手をトシの横顔に回すと、 「噛むなよ」 そう云って指で唇を割った。口腔は熱く、いやらしい粘度で肌を覆う。爪にはかちかちと震える歯列が当たる。何を要求されているのかわからないらしく縮こまる舌に、俺は低い声で命じた。 「舐めろ」 指示してようやく舌が指に絡み始める。トシに似合わぬぎこちない動きだった。そうして十分唾液を含んだ指を、俺は見せ付けるようにして抜くとゆっくり下半身に下ろした。 蕾の皺をなぞるように一本、また一本と侵入させていく。そこは思いのほか俺の指を柔軟に飲み込んだ。 「ぐ、う、」 トシは顔の前で拳を握り、歯を食いしばっている。屈辱からか、未知の快楽からか真っ赤になった耳朶をあやすように食んでやる。 入り口がだいぶ緩んだのを見届けて、俺は制服の前を寛げ自身を取り出した。反り返ったそれは自分でも笑ってしまうほどグロテスクに見えた。 片膝をぐいと持ち上げ、横抱きの体勢で蕾にひたりと切っ先を合わせる。 「あ、あ」 上擦った声が喉から漏れる。トシの中はきつく、痛いぐらいだったが勢いに任せて最奥まで打ち付けた。ぱん、と肌を打つ音がして、トシの内股がひときわ大きく引き攣るのがわかった。 「ひぃ、ぎ、」 怪我に響いて痛いのか、苦痛を訴える涙声にはけれど隠し切れない快楽がにじんでいる。こいつだって愉しんでいる。何度も突き上げるとだいぶ中が緩んできて、しこりを潰すように動くと悲鳴が長く上がる。 「好きモノだな」 後ろから呟いてやればかぶりを子供のようにぶるぶると振った。 獣の体勢で、トシの身体は木偶のように俺の動きに翻弄されている。思い出したように前の器官を探ってやれば、とっくに達してしまったようで精汁に塗れていた。 今まで誰にも感じたことのないような、凶暴な支配欲が俺の思考を真っ赤に塗りつぶしている。 「俺の名前を呼べ」 命令だ。そう言い渡せば、トシの喉から吃音が漏れた。苦しそうな息がひゅうひゅうと鳴るのが、俺の欲を更に引きずり出す。 「ほら」 促すように腰を使う。奥を容赦なく衝けば中はゆるく痙攣する。交わったところで淫液が、抱えた膝の裏で汗がひどい音を立てる。たわんだ包帯はじっとり湿っている。 角度を変え、執拗に揺すり上げてどれだけ経ったころだろう。枯れてからからの声が、か細く震えた。 「、んどう、さ、」 なあ、 みんなお前が悪いんだぜ、トシ。 |