隣で延々と繰り広げられる実のない会話を、生返事でやり過ごす。 『パー子さん』の口ぶりは女子中学生みたいにきゃぴきゃぴしている。 確かに最初は『ごっこ』だったはずだ。それがだんだんとただの演技に見えなくなってきて、僕は最初性同一性障害をうたがってしまった。九兵衛さんみたいに自認する性別がおかしくなってしまったのかと。 でも万事屋に帰って化粧を落とせば昼ごろ起きてくる銀さんはいつもの銀さんそのもので、オカマっぽい素振りもちっとも見せないものだから、 だからこれは『パー子さん』という人格なんだということにした。そのあたりが落としどころに思われた。 「ホラ、あたしあの店でナンバーワンじゃない?もう他のコが妬いちゃって妬いちゃって。ホーント嫉妬って醜いわァ」 面倒くさいけれど無視を決め込めばさらに面倒くさいことになるのがわかっているので、僕はへぇ、といい加減な相槌を返した。 「マヨ子なんてさァブスブスってあたしのこと、失礼しちゃう」 だってそうやって鼻を鳴らしている様はお世辞にだってかわいかないし。(まああの妖怪軍団の中ではマトモなほうだろうけど、まだ桂さんのほうが細面なぶん似合っていると思う)土方さんのことは決して笑えないはずだ。どっちもどっこいでキモい。 パー子さんとの会話はまともに取り合ってるとほとほと疲れる。 うんざりしてる様子を隠すつもりもない。 話はぽんぽんと、あちこち節操なく弾む。こういうとこがほんとに女子っぽくてリアルだ。応対には困るけど、これもまあ社会勉強だと思って観察している。 僕が無言なのをどう思ったのか、 ねーェ、と出し抜けに猫なで声を出され、僕は長い息を吐く。なんすか、と促せば 「手ェつ・な・ご」 おどけたように語尾を区切り、首を傾げてきた。 「やですよ」 即答すればなんでよぉ、とごねだす。そろえようとして抜きすぎた眉が八の字になる。 おんなのひとは強い。特に肝心なときに。そういうふうにできていると、姉上を見ていると本当にそう思う。 でもオカマのパー子さんにはそういう逞しさはない。強がっても痛々しくて、ガタイはいいのに頼りなく見えるのがなによりさびしい。 肘を脇に当ててぶりっ子みたいに腕を上下する。トシ考えろ、って思うけども。 僕はこの、頼りない目をする『彼女』を突き放してしまえない。 (流石におんぶしてってねだられた時はいい加減にしろってはたいたけど) そっけなく掌を上に出してやれば頬がぱぁっと高潮した。 「わぁ、新ちゃん優しいっ」 ハスキーボイスと言い張るには無理がある、このはしゃいだテナーを僕はどうにも嫌いになれない。 エスコートされる姫みたいにそっと手が添えられる。マニキュアの似合わないオトコの手。はみ出した赤。いつまでたってもうまく塗れてない。 たぶんこれも紛うかたなき彼の『一部』なのだから。 そんなら受け止めるのもやぶさかじゃない、と思う。 Back/Next |
090303