モップの十字架につるされたスタンは息絶えたキリストよろしく項垂れていて、却ってコレ罰当たりなんじゃないのかな、と僕は思った。思った後で自分の中にも信仰心というものが僅かでもあったものだと感心した。 「派手にやられたね」 「上手くバランス取るもんだな」 カートマンは顎のたるんだところを擦って言う。絶妙なバランスで梁からぶら下げられたモップはロープで十字に縛られ、スタンの手首と足首はラメの入ったゴムで固定されている。このへん女子は器用だな。 顔は青たんとひっかき傷まみれで、意識があるのかないのかはっきりしなかったスタンが、下せよ、お前ら、と消え入りそうな声で唸った。 「痛ッ」 スタンは悲鳴を上げるけれど、カイルはひるむことなく消毒液のついたガーゼを傷口に当てて行く。 「我慢しなよ」 僕は棚から取ってきた包帯をカイルに手渡した。カートマンはベッドに腰かけて、スタンが痛みに身を捩るのを面白そうに眺めている。 カイルに、ウェンディと片を付けるついでに一連の経緯をぶちまけてくることを強いられたスタンは、居合わせたクラスの女子全員から開拓時代さながらのリンチを食らい、かくして贖罪を果たしたようだ。 「別にランチタイムに、女子のグループの真ん中に突っ込んでいくことなかったのに」 カイルはそう言ったけれど、語尾は笑ったようだった。 一通り手当が終わって包帯まみれになったスタンは、おもむろにカイルの腰に手を回した。 「なあ、ミッションは果たしたんだから、もういいだろ?」 「何が?」 それ以上言う前に、スタンはカイルの唇を塞いだ。カイルには抵抗する気はないらしく、目を伏せてキスに応え始める。カートマンが潰れたような悲鳴を上げた。 「わー、やめろキモイ! 精神的傷害で診断書とって訴訟沙汰にすんぞ!」 スタンとカイルは僅かばかり唇を離すと横目でカートマンを睨み、ステレオで言った。 「自分のフェラチオ画像プロジェクターでクラスじゅうに見せたお前には言われたくない」 スタンもカートマンもゲイだ。 愛してほしい、って顔に書いてある。別にそれは悪いことじゃない。 僕なんかは付き合いきれないと思うけれど、実際彼らを選ぶボランティア精神に溢れた人間がちゃんと存在するのだから面白い。それともボランティアじゃなくて別の病理なんだろうか。僕には知る由もないけれど。 僕にもいつか、そういう、身体でも理屈でも説明のつかないような、理不尽な感情の波に浚われる日が来るんだろうか。そのときはちゃんと彼らを反面教師にできればいいんだけど。 「羨ましいんならバターズ連れてきて対抗すりゃいいじゃん」 「お前ら死にたいか? まじで?」 全く、これだから彼らと一緒にいるのは退屈しない。 可笑しくなって肩を震わせると、みんなが一斉にこちらを向いた。かくして僕は、三組の怪訝そうなまなざしに捕まった。 end. 130712 |