デュアルハニーズマックス(後)


冗談じゃねぇ。

食堂では隣の席を争い、トイレまでついてきては隣の便器を争い、対抗意識からか人目もはばからずしがみついたりやりたい放題。時間がたつにつれ接触もあか らさまになって、しまいにゃダッコちゃんが左右にぶら下がってるみたいな惨状になった。
ダッコちゃんはいい。軽いしかわいい。トシは重い。そのうえ可愛くない。
ひとりでさえ持て余し気味のトシがふたりでコンボとかどんな悪夢だ。


さんざん振り回されて夕飯時には、めまいがどんどん酷くなってきた。額を押さえていると、ふとぎゃあぎゃあ言い合っていたふたりの応酬が止んだ。
「近藤さん、顔赤いぞ」
神妙な顔でこちらを覗きこんできた、トシがおれのおでこに手を伸ばす。
「え」
トッシーも眉をハの字にして、頬に手を当ててきた。
「ほんとだ。ちょっとあるでござるね」

「山崎!体温計!」
トシが怒鳴りながら廊下を走っていく。トッシーも薬箱薬箱、と云いながらあとを追った。


すぐに布団が延べられ、俺は寝かされ、たところまではよかったんだけれども。
「ちょ、もう、トシ、いいって」
次々と布団部屋から運ばれてくるかけぶとん。競い合って俺の上にうずたかく積まれていく。ふとんの山はさながら牢名主。でも俺の身体はそれに敷かれている わけで、窒息しそうなくらいに苦しい。初夏だって言うのにこれはない。
「お、重い」
俺の呻きを無視して、今度は山崎から絞った濡れふきんを奪い合っている。山崎はこちらへ気の毒そうな顔を向けてはいるが割って入る気はないらしい。
「てめ、ひっこんでろよ」
「そっちこそ邪魔でござる」
「んだと、やるか」
争って身を乗り出す、トシの片膝が木だらいを蹴り上げた。
「望むところでござ…あっ」
まあこうなるよね。たらいは見事俺の顔面をクリーンヒット。頭からびしょ濡れになって、俺にはもう怒る気力もなかった。

結局それでてきめん熱が上がり、俺にしては珍しく医者の往診をうけなけりゃならなくなるほどだったらしい。らしい、というのはほとんど意識がなかったから で、山アからの伝聞だ。




ぼんやり瞼を上げると見慣れた顔が二つ。眉を寄せた深刻そうな表情だった。
「近藤さんっ」
「近藤氏っ」

目の下にクマができてやがる。仰げば時計は午前様、夜明けに程近い。
あれからずっと看病してくれてたのかな。そう思ったらなんかちょっときゅんときた。わがまま言っても滅茶苦茶やっても、やっぱりこいつはかわいい。
よしよし、と片手ずつで撫でてやれば、二人して抱きついてくる。
「よかった、目が覚めねぇから気が気じゃなかった」
「ごめんなさいナリ」

鼻をしゃくりあげる、トッシーの目元が腫れていたので、間近にあったそれにそっと舌を伸ばした。くぅ、と仔犬みたいな声を出す、睫はぴくりと震えている。
「ずり、おれも」
ねだるように頬を擦り付けられて、今度はトシに首を傾げる。名残惜しそうなトッシーは襟足をくすぐるように撫でてやった。
「ん、う、」
二人とも頬を高潮させ、うっとりしている。
あ、やべ、スイッチ入れちまったかな。まあでも看病のお礼に少しぐらい、ご褒美で可愛がってやってもいい。まだ熱っぽい頭でそんなことを考える。

トシの唇が上唇を食んだので、そのまま口付ける。俺に熱があるからか、トシの舌はいつもよりひやっこく感じた。舌の根から吸い上げるねちっこいキス。口蓋 を舌先でねぶる。
「近藤氏、僕は、ァ」
空いたほうの腕でトッシーの身体を抱きこむ。後ろから右胸に手を這わせ、乳首をシャツごしに引っかく。そこはすぐに尖ってなおさら弄りやすくなった。
ふたり一緒なんておよそ初めてで、ただでさえ不器用な俺はうまくいくか自信がないけど、トシ相手になら無駄に経験値高いし、いいところも知り尽くしている からな。
呼吸がうまく出来なくなって唇が離れたので、今度はトッシーにキスを。トシはふうふう息を荒げながら俺の腕を抱え込んで、下腹部を押し付けてくる。
「んどうさん、ずりぃよぉ」
首を振る媚びたような仕草をぐらぐらした頭で愛らしいと思う。
誘われるままに前から手をもぐらせ、掌でやわやわと擦ってやる。トシの器官は俺のいい加減な愛撫にもすぐにがちがちになる。すぐにぎちぎちと湿った、いや らしい音が立ち始めた。
「だめ、そこばっか、だめ、ェ」
胸板を叩いて身体を捩った、トッシーが悲鳴じみた声を上げる。乳首ばっかりを執拗にいじっていることへの抗議なんだろうけど、俺だって別にわざとじゃな く、二人が相手なので一心に動かすのが精一杯なんだ。

「やだ、いっちゃ、」
「せっしゃも、ぉ、」

ほぼ同時に俺の左肩と右耳のあたりで身体をのけぞらした、二人の身体からぐてっと力が抜けた。

おお、やれるもんだな。
ぐったりした二人から俺はそろそろと腕を離し、枕もとのたらいでさっと手を拭く。
二度寝を決め込もうと布団へ身体をずらしたとたん、浮かされたような声が鼓膜を覆った。

「、これだけじゃ、足りねぇよ」
「もっとちゃんとして、でござる」
すがりつくように膝と足をむんずと掴まれ、腰が逃げる。喉からヒッと情けない声が出た。





点滴のぶっといチューブをぶっさされて、四肢にはろくに力も入らない。たぶん今俺の顔、死相が出てると思う。
絶対安静、面会謝絶、医者には青筋を立てられた。

「どうして二人ついていながらこんなことになったんですか!」
山崎に怒鳴られながらも二人は、デモダッテと責任を押し付けあっている。
「もう出てってくださいよ!これじゃよくなるもんもなりません」
山崎の声がガンガンと頭に響く。ふたりはまだぶーたれてて、それでも部屋を辞す気配は微塵もない。こいつらのことかわいい、とか俺どうかしてた。いくら喉 を鳴らしてなついてきたってしょせん野獣。

「ぜ…」
ぼそりと漏れた声を耳ざとく聞きつけ、ふたりが俺を覗き込む。
「ぜ、ぜんざい?」
「ぜ、ゼータガんダム!」

その後は言葉にならずに俺は気を失った。
前言撤回。





090509