軽く頬に寄せられた唇が音を立てる。顎を甘く噛まれた辺りであ、これやばいな、と思った。 だんだんとこちらへ預けられる体重に肩を引けば、背中で襖ががたと鳴った。 「トシ、仕事中」 咎める声にも関わらず、舌の腹がざりざりと顎鬚を撫で上げる。トシはうっとりと目を伏せていた。 「んー」 生返事もいいところだ。 「んーじゃなくて、」 ゆるゆると押し付けられる腰の硬さを制服越しに感じて、俺はため息を吐きたくなった。ダメだ、完全に発情モードに切り替わってしまっている。最後までとはいわずともいっぺん抜いてやらないと収まらないだろう。 致し方なく襖に手をかけ、すぐ後ろのトシの部屋になだれこんだ。 もつれる足を導いて畳に膝をつく。 隊服の背中をぎゅうと握る手に引き寄せられて唇を寄せた。粘膜を絡めあう前戯のキス。高潮しきった頬、顎を伝う唾液を拭いもせずに恍惚と目を細める、こんなに気持ちのよさそうな表情を俺は知らない。 こうして全身で自分を乞われれば、優越にも似た痺れるような快楽が俺を捕らえてしまう。いつだってこいつの思う壺だ。 咥内の水音がだんだんと頭の芯を霞ませる。ああ、早く終わらせないとならないんだ。残った理性に駆り立てられてそろりとトシのベルトに手をかけた。 前をくつろげると、下着越しにはりつめた粘膜を布の上から握る。掌で浮きだった血管を柔らかく撫でて、びくと突きあげられる腰を左手でさする。 「ん、うぅ」 中指でさするだけの動きがじれったいのか、舌を絡めたままの口蓋がひきつった。 亀頭を探り当てて漸く口を離し、布ごと指で扱く。中のぬめりがぴちゅぴちゅと厭らしく耳を打つ。 「あ、あ、」 腰を撫でていた手でベルトごとスラックスをずり下げる。下着の裾から指を這わして、恥骨を親指で叩く。中指をく、と蕾に当てれば、柔らかなそこは貪欲に異物をくわえはじめた。 初めは長い息を吐きながら俺の動きに合わせていたトシが、じりじりと指を増やした辺りで不服そうに唸った。 「っ、や、」 「何がいや?」 耳朶を食みながら聞けば、感じ入ったのか喉を逸らす。 「足、りね、ぇよ、」 言葉と連動するように内部がひくついて、きちと鳴る。俺の下半身を探ろうとするトシの手をやんわり宥めた。 「まあ待て」 自分の息も上がりきっていることに内心で苦笑する。 硬度を増した自分のものを取り出し、トシの膝を大きく開く。後腔に合わせる代わり、むき出しにしたトシの先端に摺り合わせた。 先走りがびちりと鳴って、電流みたいな快感が脳髄に走った。悲鳴みたいな声が上がる。 右手で俺とトシのものをまとめて握りこみ、目だけで笑って見せる。俺の思惑をやっと察したのかトシは涙目でかぶりを振った。 「やだ、後ろが、い、」 「今はこれで我慢、な」 「、あーッ」 駄々っ子のような口上はすぐに上擦ったあえぎに変わった。 技巧も無い、荒いだけの動きで追い上げる。手の中はすぐにぐずぐずになって、ともすれば外れてしまいそうだ。雁の部分がひっかかるように何度も握りなおせば、辛抱の無いトシのほうが一足早く、蓋をした左手に白濁を吐き出した。 焦点の合わない目のまま息をつむぐ、トシのスカーフの形を整えてやる。汚した下着だけ替えればこのまま勤務に戻れる。置時計にちらと視線を走らせて腰を起こそうとするけれど、袖口をぐいとつかまれて叶わなかった。 「近藤氏、」 「へ」 とろんとした目のトシがこちらを見上げる。あれ、今近藤氏って云った、よ、な…… 「本体だけずるいでござる、」 僕も、と上手く回らない舌で誘うトッシーに、俺はリアルに畳につっぷしそうになった。もしかしたら、これから毎回二人分がんばらなきゃならなくなるわけ? ああ俺身体、持つかなぁ…… (了) 081115 |