最後に送信のアイコンを押して、完了。 肩を持ち上げこきこきと首を慣らす。これで今日〆の仕事は終わりだ。 「終わったぞ」 振り向いて一声かけると、アニメ雑誌から勢いよく顔を持ち上げて、トッシーが四つん這いでにじりよってきた。 そのまま膝に乗り上げて、向かい合って大仰に抱きつく。 「待ちくたびれたナリ〜」 図体は大人のそれだからそれなりに重いし無邪気な動作もコレ他人が見たら相当イタイんだろうなと思うけれど、神経が麻痺しちまったのか、大型犬みたいで微笑ましいと感じてしまう。 そう、トッシーは犬に似てる。そうすると差詰めトシは猫かなぁ。 「いいこにしてたから、褒めて」 満面の笑みですり寄るから、わしわしと頭を撫でてやった。今にもきゅーんと鳴き出しそうだ。 「トシ、なんかついてるぞ」 至近距離で気が付いて、口の周りを拭ってやる。甘ったるいミルクみたいな香り。 「アイス食べてたでござる」 自分でも舌で舐って、てへ、と笑う。 さっきまでトッシーが座っていたあたりに視線をやると、なるほどハーゲんダッツの空カップが転がっている。あ、あれお妙さんが好きだったっけ。なんとはなしに思い出す。 目を細めていると、ふと首を傾げたトッシーが、自分の顎に指を当てた。 「近藤氏はァ」 「ん」 「おっかけられると逃げて、逃げられるとおっかけるタイプでござるな」 「ぐ」 トッシーのくせになかなか痛いとこ突きやがる。 言葉を呑んだおれに、トッシーは少しむくれて某一休さんのテーマを歌い始める。 しかも音痴。ちょ、こっぱずかしい。 「ト、トシ、やめなさい」 渋い顔で口を塞ぐと、唇が指の下でもごもごと動く。 「近藤氏は?」 寄せられた眉に、上目遣いで揺れる瞳。 ふう、とため息を吐いて、掌で背中を撫でる。 「ちゃんとスキだから、安心しろ」 肩を押さえ、角度を変えて顔を覗き込む。 「もひとりのトシも聞いてる?」 歯を見せて意地悪そうに笑うと、彼は目を見開いてゆでだこみたいになった。 ふいと顔を背けて、ぼそぼそと口を動かす。 「…っかい、」 「何?聞こえない」 耳を寄せると、途切れ途切れに呟いた。 「聞こえなかったから、もう一回、」 (了) 071014 |