絶対命令局長・後


トランシーバーから流れてくる現場の声に、体中に走っていた緊張が、一気に脱力して突っ伏した。とりあえず最悪の事態は免れたようだ。
間もなく身体が動くようになった。近藤さんが例のマントを脱いだのだろう。

二十分後、屯所に帰ってきた近藤さんは上機嫌だった。
「たーだいま、トシ」
渋い顔の俺の前、さきほどまで座っていた座布団に腰をおろす。
「いい誕生日だったあ!お妙さんのおめでとうが聞けたの初めて!」
近藤さんがもこもこのマントと王冠を机の上に置くのを眺めて、おれは目を眇めた。
「もうそれ脱いでいいのか」
「ん?」
ちょっと嫌味が言ってやりたかったのもあった。唇を尖らせる。
「おれたちにもなんかねえの。それで命令すればなんだって聞くんだぜ」
近藤さんはいいや、と首を振った。
「お前らには命令なんかしないよ。だってお前らは、結果はどうあれ、なんだって、俺のため思ってやってくれてるだろ。いつだってさ」
ぽんぽんと頭を叩かれ、そんなものか、と思って口をつぐむ。
近藤さんはさも面白そうに、俺の顔を覗き込む。
それにお前は。
「ちょっと言うこと聞かないぐらいがかわいいよ」
そんなことを素面で言うものだから、かっと頬に血が上った。俺は耳元にかみついて、
「おわっ」
明日の夜は覚悟しとけよ、と囁いてやった。


【了】
120904