もう長いこと石畳を睨んでいる。 涙の乾いた頬がひりひりと痛い。腫れた目元を乱暴に擦る。 延々考えているうちに、何に自分が腹を立てていたのかもよくわからなくなってしまった。 理性に顔を背けても近藤を想い続ける土方のことなのか、よりによって土方のことで自分に弱音を吐いた近藤のことなのか、それとも彼らに愛想を尽かせない自分のことなのか。 石の数を数えたり、数えきれずにやめたり、視線を行きつ戻りつさせて、どれだけ経っただろう。 眦に黒い革靴が見えた。 「行くぞ」 顔も見たくないと思っていたけれど、でも今ここに来たのが土方じゃなかったら絶対に自分は屯所に戻らなかっただろう。 「おんぶしてってくだせェ」 両腕をまっすぐ土方の方に伸ばす。土方はハトが豆鉄砲を喰らったような顔をしたけれど、笑いはしなかった。 煙草を足元で揉み消し、自分の方に背中を向けて、少し屈んだ。自分は土方の背中に乗り上げて首に腕を回す。 土方はしっかりした足取りで歩き出した。自分の体重が運ばれていく感じは懐かしいものだった。遊び疲れて寝転けた後、土方や近藤の背中で目覚めた日を思い出す。 こういう儀式、いくつものいくつもの反復を経て、自分たちは共同体であると確認しあう。この滑稽ですらある作業こそが、自分たちを根っこで、抗いようのない力で結びつけている。 家族なんてそんなものだ。家族「である」んじゃない、家族「になる」んだ。 そこには近藤の、土方の、そして自分の意思が働いているのだと思う。 ほんとは。 ほんとは、こんなに血腥いオレたちが、愛だの情だのお笑いぐさだ。 それでも、 このふたりが自分の未練であるように、このふたりにとっても自分が未練であるならば、 もうそれだけで自分が生まれてきた意味になると思える。 思って、胸が塞がる。 「鼻かむなよ」 土方の声は穏やかだった。 今下手に口を開いたら涙声になりそうだったから、嫌味も云えずに自分の肩口に顔を伏せた。 土方の身体も、布地も、ちっとも柔らかくなかったけれども、 視界は黒く、温かかった。 |