「まったく。あいつ手加減てものを知らねぇ」 なんだか知らんがやたらエキサイトしている総悟の相手を半日して、もうへとへとだ。 「ここでいいか」 湿布をつまむ近藤さんが後ろから、おっかなびっくりといった体で聞く。 「あー、もうちょっと左」 ひたりと冷たい感触が気持ちいい。ちょっとよれてしまったらしく、あっ、とかとりゃ、という掛け声の末にぱんぱんと叩かれた。おしまい、の合図。 おれはもろ肌を脱いだまま背を伸ばし、肩をぐきぐきと回した。 近藤さんを追い回さないおれなんてあいつにとっちゃ願ってもないことだったはずなのに、なんで元に戻ってあんなにはしゃいでるんだか不可解だ。 「だいいちあいつは、」 「トシ」 骨の髄まで染み付いた声に振り仰ぐ。近藤さんがおれの話を遮るなんて珍しい。 「こっちおいで」 珍しいけれど別におれの話なんてどうだっていい。ひざをぽんぽんと叩かれて、喜び勇んでいざり寄った。 腿をまたいで乗り上げても、近藤さんはいつもみたいに困った顔をしない。調子に乗って頭を抱えこむ。裸の腕に近藤さんのセットした髪がちくちく触れた。 肉厚の唇が浅く笑って、近藤さんの右手が頭の後ろをぐしゃぐしゃと撫でる。頭皮を撫でる太い指の感触が気持ちよくて、おれは思わず目を細めた。 顎をべろりと舌が撫で、喉にゆるく噛み付かれる。ふ、と啼けば、しきっぱなしの布団に横たえられた。 反転した視界に大映りになる、蛍光灯の灯りで若干逆光になった、近藤さんの顔はどこか神妙だった。眉間による皺に、ぞくぞくと背筋を痺れが這い上がってくる。ああ、ほんとにおれは、身体の毛穴の一つまでこのひとにぞっこんなんだ。 唇が降りてきて額に触れ、そのまま目元をかすめる。鼻先に当たる顎鬚がくすぐったい。 「な、トシ、おれのこと好き」 吐息の隙間に、ああ、と応えた。なんでそんな自明のことを聞いたりするんだ。 「ほんとか」 口の端に出来るえくぼにうっとりと目を細める。 「ん、好き、」 おれの言葉を待っていたように膝が掴まれ、その間に近藤さんが割り込んできた。 袋の形を確かめるように指の関節で撫でられ、立てた膝が無意識に揺れる。 いつになく執拗なキス、咥内を舐る舌に集中したいのに、雁を指でなぞられては敵わない。そこはすぐに芯を持ち、ぬめりをもって育っていく。 喉の奥まで塞がれているような錯覚がする。息がしていられなくなって顔を背けたら、ぐいと乱暴に向きが戻された。 「逃げんな」 ぴちゃぴちゃ鳴る唾液の間から囁く低音に、まだろくにいじってもいない器官がはじけそうになる。いつにない近藤さんの強引さが快楽を増幅させて、堪えようとしても視界が潤む。 「ふう、ゥ、」 下着のゴムが引っ張られて、外気にさらされたところをすぐに手の腹が覆う。やわやわと包み込むのに先からいくらか漏れてしまって、もどかしさに身を捩った。 やっと呼気が開放されたと思ったら、今度は身体を裏返しにされた。 シーツに反り返った性器の先が掠ってぬめる。たまらずおれは声を漏らした。交歓した唾液が垂れてしまうのが惜しい。 後ろからのしかかる近藤さんの吐息がおれの襟足のあたりを覆う。湿布を貼ったところに近藤さんの肌が重なって、こんなの貼るんじゃなかったと思った。五感はみんな近藤さんでふさいでほしい。 切羽詰ったみたいな、せわしない呼吸が聞こえて、期待で顎が浮いた。いつもならいやというくらいに慣らしてからじゃないと入れてくれないのに。 衣擦れの音がして間もなく、熱い粘膜がひたりとくぼみに押し当てられる。 「ひゃ、」 そのまま力任せに、腹のどんづまりまで割り入ってきた。 「あぐ、う」 ごつごつした幹がいいところをまとめて擦る乱暴な快楽。息苦しさに変な声が漏れる。 内壁を押し上げる、腹に詰まった熱がどくりと震える。 「あー、あ、」 近藤さんはふー、と長い息をつく。おれが息を整える間もなく、腰を思い切り引かれた。ずるりと出て行った楔が勢いを借りてさらにずんと腹を突く。ぱん、と肌のなる音がして、一瞬遅れてやってきた衝撃に頭が真っ白になる。 ぐらぐらとぶれる視界に、身体がゆすぶられていることを知る。呼吸がうまく出来ない。内股が痙攣している感覚が遠い。 抉られているところから熔けだしてしまいそうだ。こうして中で近藤さんの形を感じられる、おれはどれだけ幸せなのだろう。 腰を支えていた右手がそっと腹にまわり、膨らんだあたりをなぜる。臍をかすった指に、腹を突き破られてしまったみたいなひどい錯覚に見舞われておれは悲鳴を上げた。 「ひ、」 度の過ぎた開放感に身をゆだねる。精液の通る尿道ごと焼け付いてしまうかと思った。 「……、く」 おれの長い射精の間に、近藤さんが低くうめいた。 内部でだぷ、と熱いものが溢れる。近藤さんの射精もおれの気が触れてしまうほど長かった。含みきれずに漏れたものが痺れきった内腿を伝って温い。 余韻に浸る間もなく肩をひっぱって起こされ、胡坐の上に座らされた。結合がさらに深くなって、達したばかりの身体には酷く毒だった。首筋を甘く噛まれる、 おれを貫く近藤さんのそれはまだ固さを失っていない。重力に従ってどぷりと入り口から子種が逃げるのがもったいないと思うのに、力なんかどこにも入らない。 「ふ、ゥあ」 涙声を出せば顎をつかまれ、捻った体勢で口付けられた。ひざは揃わずがくがく揺れる。 ゆっくりと、けれど容赦のない力強さで突き上げが始まる。奥を捏ねるような小刻みな動き。下生えを摩っていた手が降りてきて、吐き出した精液を拭うように鈴口を引っかかれる。 耳朶を食まれ、前を握られ、意味のない喘ぎばかりが律動にあわせて口から押し出される。 「、れのこと、」 好きっていえ。 鼓膜に吹き込まれるそれが脳に届く前に、ひしゃげた声でおれは、すき、を搾り出した。 「もっと」 要求されるままそればかりを繰り返す。脳髄がどんどん煮えていくのがわかる。 金輪際、近藤さんと、好き、しか喋れなくなっても、おれは別段不便は感じないだろう。 汗を拭き終えてもおれの髪をずっと梳いている手が、ちょっと気恥ずかしくなって指でちょいちょいとつついた。 「近藤さん?」 「ん」 返事は有るけれど手を退かす様子はない。おれは布団を口元までひっぱってきて、もごもご云った。 「今日の近藤さん変だ」 「うん、ゆうべまでお前がヘンだったかんな」 お前がヘンだと、俺もおかしくなっちゃうよ、と笑った、意味もわからなかったけれどあんまり眩しかったものだから、おれは莫迦みたく見惚れてしまった。 090611 |