俺は息をひそめるみたいにして囁いた。
「いいよ、カイル」
それは嘘だ。前歯ががちがち当たるし、ぎこちない動きは危なっかしくて仕方ないのだけれど、それでも、潔癖症のこいつがトイレの床に膝をついて、かわいい顔を歪めて、一心不乱に俺のそれにしゃぶりついているというシチュエーションは大いに俺の脳を焼く。
背中をドアにべたりと押しつければ、蝶つがいがカイルの動きに合わせて軋む。個室の外に今は誰もいない。もっとも、誰かがいたってそれは俺たちの興奮を増幅させるだけなのだけれど。スリルはいつだって、快楽をより鮮やかに彩ってくれる。
俺
は鼻を微かに啜りあげて、湿ったアンモニア、饐えた臭いを嗅ぐ。壁の下品な落書きがだんだんぼやけて見えてくる。取り巻くすべてのものに際立たせられ、
翻って俺たちがここで繋がっていることはこれ以上なく聖なることだ。俺たちのあらん限りの遺伝子とちいさな死は、すべてこの恋に捧げられる。
目を閉じるとカイルのちいさな舌が俺のペニスの先をくすぐるように撫でているのがつぶさに判る。
薄目で見下ろせばカイルは自分の尻の下に畳んだ足で腰を揺らしていた。俺のペニスをしゃぶりながら、こいつも気持ち良くなっている。
俺はとうとう辛抱できなくなって、自分で腰を使い始めた。こいつの中に突き入れるときの動きを摸しながら、グラインドを大きくする。喉の奥の柔らかいところに当たるのがたまらない。
ひときわ深く突けば、ぐ、とカイルが苦しそうに喉を鳴らした。反射的に退く頭を帽子ごと押さえる。真っ赤になった目もと、涙を湛えてこちらを見上げるエメラルドの瞳。
射精の開放感とともに手の力が緩む。カイルは俺のペニスを思いきり吐きだした。激しく噎せて、溺れかけた人みたいに大きく息を吸い込んではえづいている。
俺は荒い息のままジッパーもあげずに、その場にしゃがみこんでカイルの背中を撫でた。半分開いた唇は俺の精液でてらてらと光って、息苦しそうな呼吸を漏らしている。ごぽ、とあられもない音を立てて、白濁が彼の顎を逃げた。
「ごめん、カイル」
俺の声には理不尽な腹立たしさが少しばかり混ざっていた。
時折境目がわからなくなるぐらいに俺たちはひとつなのに、
なんでこいつの身体はすっかり俺の形になってないんだろう?
20130609