「お疲れ様です」 「おー。今日は蒸すなぁ」 すれ違う隊士に笑いかけながら廊下を歩く。 今日はもう用事もないし、メシ食ったらすまいるでも行こうかなぁ。ルンルン気分で自室の戸を引き、鼻歌を歌いながら上着を脱ぐ。着流しを羽織り曲がサビにかかったあたりで、 「近藤さん」 障子の外から低く呼ばれた。 「入るぜ」 云うなり了承を待たずに入ってきた、トシは肩にタオルをかけていたので俺は若干警戒して身構える。 「な、なんだよ」 すり足で近寄るったトシの頬は淡く上気している、ホーラやっぱり風呂上りだ。厭な予感に限って外れてくれない。 「ここんとこご無沙汰じゃねぇ?」 来たぞ来たぞこのせりふ。俺はすっとんきょうな声を上げた。 「ご無沙汰ァ?そんなことねーだろ、日曜もしたろ」 「もう三日も経ってるだろ。あんまり溜めると身体に悪いぜ」 三日もってなんだ、もって。つっこむにつっこめず口をぱくぱくさせているとトシは後ろに組んでいた手を前に回し枕を抱いた。どんだけやる気満々なんだよ。そば殻がざりと掠れて、俺は天を仰ぎたい気持ちになったけれど諦めたらそこで試合終了だ。どうにかこうにか宥めすかして帰したい。 「ほ、ほら、もうすぐ晩飯だし」 ちらちらと壁時計に目をやれば、トシはしれっとして云った。 「後でいいじゃねえか。あんた買い食いしてきただろ」 「え、なんでわかるの」 「ここ、ソースついてるぜ」 唇の端を指され、たこやきか、と云われて言葉に詰まる。行動パターンなんか全部読まれているのがどうしようもない。 「わかったよ」 観念して背を丸め、敷きっぱなしになっていた布団へどかりと座った。 腰の辺りにおかしなでっぱりがあったので浴衣をちらとめくると、出てきたものに脱力した。 ああ、今日はひもぱんなんだ…。 「もっとかわいいのがよかったか?」 きょとんとして尋ねられ、もうつっこむのもいやになる。 「ああ、もうなんでも」 いいです、みなまで聞かずにトシが首っ玉に抱きついてきた。ごろごろ喉が鳴りそうな表情で俺の頬を甘噛みする。くすぐったくて襟を抜くように引っ張れば、近づいた唇が俺の上唇を食んだ。 「…ないだも、」 「ん?」 聞き返せばねだるように云う。 「こないだも中で出してもらってない」 「はあ?」 「中で出してもらってイキたいのに」 あのな、お前。いくらも文句がいいたかったけれど、口づけにふさがれて叶わなかった。口蓋にちゅくちゅく音が響いて、トシの吸ってる甘ったるいメンソールの匂いが鼻から抜ける。ぴったりくっついた胸板の下、臍のあたりに硬い感触がある。キスだけでこんなになっちまってる。 内股に手を這わせると、あわせた唇からくぐもった唸りが長く漏れた。 「え、なに、」 もう出ちゃったの。問えば真っ赤に染まった頬が俯く。 弛緩した身体を撫でてやり、引けている腰をぐいと抱く。 ひものぱんつはサイドをちょっとひっぱっただけで簡単にとれた。なんだこれ、下着の意味ないじゃん。ぱんつは精液を含んでシーツの上、湿った音を立てた。 トシの左袖を探り、チューブを手に取る。中身を左手にぶちまけて掌で捏ねる。 指先で襞をほぐすように撫で、一本目を潜らせた。 「ん、ふうッ、」 多少手荒にしたってすぐに綻びるのを知っている。軟膏の滑りが卑猥に鳴る。二本で中を広げるようにすれば、前立腺に掠ったらしく甲高い声が漏れた。 堪え性がないトシには、焦らすとかそういう手管は通用しない。前なんか下手に弄ろうものならおもちゃみたいに噴き出してえらいことになるので、わざと放っておいてある。たまに布地や腕に掠るだけでも充分らしく、そのたび背中がしなる。 自分のものが育っているのを確認して苦く笑った。露悪にすら似た痴態を見せ付けられて覿面興奮する、俺だって相当いかれている。 奥までずぐり、と達したとたん、取り込まれた内壁が短く痙攣した。俺の腹の辺りに温い粘液が叩きつけられる。 「トシ、早ェ、よ」 「……、ァ」 言葉は意識まで届いていないようだ。 俺の砲身をくわえて蠢く、内部の感触を暫し味わって、ゆっくり腰を引いた。肛壁が名残惜しげにざわざわと抵抗する。打ち付けるたびにトシはあられもなく啼く。 「あー、あ」 涙と涎、あと鼻水でべとべとになった、恍惚とした表情はどこか気狂いを思わせて、罪悪感のようなものが胸を衝く。 ひときわ奥を抉ると腹筋がぴくぴく震えた。粘度の低い、生暖かい感触が下半身をぬらす。 「、ひィ、ァ」 ぬるいアンモニアの香り、ああこいつまた漏らしちまった。 正気に戻りそうになる意識を振り切るように肢を高く掲げて、グラインドを大きくする。汗みずくで笑いっぱなしの膝裏を握りなおす。芯のなくなったトシの性器は律動にあわせてひしゃげている。 三回目ぐらい射精するともう筋が締まらなくなってくるらしく、商売女のそれみたいに蕾が緩む。結合部もびしゃびしゃで、陰嚢を潰すように腰を突き出してやれば酷い破裂音が耳を打つ。 「ほらトシ、ちゃんと締めろよ」 俺は半ばうんざりして云った。虚ろな目でがくがくとうなずくけれど、内腿の筋肉は脱力したままだ。 致し方なく掌を広げて尻を叩いてやる。ぴしぴしと派手に鳴って、擦り切れた頭にもそれが響いたのか入り口ではなく中がうねる。そこを崩すように執拗に突き上げた。 トシはもうすっかりトんじゃっていてあの形に開いたままの口から唾液がだらしなく顎を伝うのがいやらしい。いやらしいと思うけどなんだかトシを道具にしているみたいで、こんなセックス好きじゃないのに。早く終わりにしたい一心で抜き差しする。 もうちょっとでイける、ちかちかしたのが頭に上ってきたところで、 「…う、」 トシが潰れた声を出して、がくりと喉を晒した。 糸が切れたみたいになった身体、肩をゆすっても反応がなくて、俺は苦々しく呟く。 「…またかよ」 だから厭だって云ったのに。 俺がこいつとセックスをしたくない理由はこれだ。 たいていトシが先に使い物にならなくなっちゃって、俺は結局イけずじまい。 意識のないやつとするほど悪趣味じゃない。おれは中途半端な状態の刀身を抜き、肩を落とした。トイレに行くのもばかばかしい。 惨状といってもいい布団の有様、掃除のことを考えれば自然と萎えてくる。トシは満足そうにすうすう寝息を立てていて、 これで「中で出してもらってない」とか、本当よく言う。 とりあえずもう一組布団を出して、シーツを敷いて。手ぬぐいでざっと拭ってやって横にする。羽織をかけてやったところでため息が漏れた。 シーツは洗い場に、布団はそろそろお陀仏かも。あと雑巾絞って持ってこないと。 それでも懲りもせずまた明日もトツゲキしてくるんだよな、こいつは。 090423 |