泣いて、泣き疲れて眠って、起きてまた泣いて、 荼毘に付すまでずっと、彼女の身体の傍にいた。 朝一番に起き出して顔を洗って、隊服を着込む。 鏡で見たら眼は、ウサギみたいに腫れていた。ひでェ顔、とひとりごちる。 久々に食堂でまともな飯を食った後、 もう勤務に戻る、と伝えたら、近藤は驚いたようだったけれど、すぐに頼もしい顔になって頭を軽く撫でてくれた。 「やれるのか」 軽口を叩いて笑って見せると、近藤も応えてえくぼを作った。 子供扱いも今ばかりは有り難かった。 いつまでもふさぎ込んでいるわけにはいかないし、近藤に心配をかけるのも本意じゃない。 もう存分泣いた。そう思って隊務に戻ろうと決めた。 けれど。 だからといってこの痛みを日常に紛れさせてしまってはいけない。 自分たちがよってたかって踏みにじって、よりによって今際に、幸せだった、だなんて云わせてしまった、 彼女のことを自分はいつでも忘れないでいようと思う。 否、忘れることが赦されるはずがない。 夕方誰もいない参謀室で、心なしか丸まった背中を見た。 たばこの煙が薄く立ち上っている。足音を殺して近づいた。 土方は、人前で泣きこそしなかったものの酷く打ちのめされているようだった。当たり前だと思った。 自分と同じくらい傷付いていればいい。彼女の死を刻み込んで、めちゃめちゃに胸を潰して、 そうして同じだけの枷を引きずる義務が、こいつにもある。 そうでもしないと姉上が浮かばれないじゃないか。 煙の籠もった部屋に大股で踏み込み、突き当たりの小窓を開ける。 それからゆっくり向き直ると土方は、 「、総悟か」 自分の顔を見て、何故か少しほっとしたような表情を見せた。予想外の反応にむっとした。 土方はここ暫く自分を避けていた。理由は明快だ。自分の顔を見ると厭が応にも、面差しの似た彼女を思い出してしまうから。それなのに何故今、こんな顔をするんだ。 自分の顔を不自然に近づけた。見上げる形で二度、ゆっくり瞬きをする。 土方は思い知ったように苦く眉を寄せ、身体を小さく竦ませた。 そうだ。それでいい。 唇を噛んで、云った。 「おれは、あんたの背中を一生離れねェよ」 淡々と喋ろうと努めたら、却って笑っているみたいになった。 「あんたが一生、誰にも惚れたりできねェように」 いつでも思い出させていてやる。痛みを、ずっと突きつけてやる。 暫し、噛み砕くような沈黙があって、 「そんなの云われねぇでも、」 土方は目を伏せたまま、嗄れた声で答えた。 「わかってら…」 語尾が頼りなく消えていくのを耳に沈めて、自分は土方のこめかみのあたりを睨んでいた。 こんなことを彼女が微塵も望んでいなかったとしても、 自分とこいつに残された償いなんかそれくらいなんだ。 |