マットに押し倒すようにのしかかったら近藤さんは今更、上ずった声を上げた。 「ちょ、待ってトシ、こんなとこでやんの、」 おれはフンと鼻を鳴らす。タバコに付き合え、と云ったらのこのここんなとこまでついてきた、あんたが悪いんだぜ近藤さん。 第二校舎の踊り場下の、薄暗い体育用具室はこの時期使われておらず、使い古しの埃っぽいマットとハードルの類が押し込まれていて、以前から目をつけていた絶好のスポットだ。 ばつの悪そうな顔をした近藤さんが、じりと腰を引く。引いたってすぐにハードルに行き当たってゴゴン、といくつか向こうに倒れた。バーカ、こんな狭いとこで逃げようったってムダに決まってんだろ。 「誰か通ったらさァ、んむ、」 往生際の悪い近藤さんの唇を、おれは噛み付くみたいにして食んだ。 だって二時間目の体育の後、あんたの汗の匂いを後ろの席でかいでたらたまんなくなっちまったんだ。鼻先を胸元に近づけて、すん、と思い切り嗅げば頭がくらくらしてきた。媚薬成分とかが入ってるんじゃないかというぐらいに、この匂いはいつでもおれの劣情を呼び起こす。ぞくぞくする背中をぶるりと震わせた。 「なあ、」 往生際悪く未だ拒むようにこちらへ向けられている手のひらを掴んで、捕らえた指をフェラチオでもするかのようにぴちゃぴちゃといやらしく舐め上げる。 たまらない、といった声がくうとおれの喉で鳴る。腰を揺らして脛の辺りに高ぶったそれを押し付ける。精一杯の媚態で誘えば、近藤さんの喉仏がごくりと上下 した。 関節からこぼれた唾液を舌の腹で追う、少し目を細めれば近藤さんの眉がひそめられる。ここでおれを突き放せるほど十八の彼の性欲は大人しいものじゃないのを知っている。 スイッチの入った近藤さんに挑みかかられ、簡単に体勢は入れ替わった。 「ア、」 押したおされて、われながら浅ましい声が上がる。でもこの声で近藤さんが高ぶってくれるのなら安いものだ。 緩めてあったベルトを抜き、ジッパーをおろし、くつろげた前から湿った指が下着の中に進入してくる。下生えを肌を梳くように潜った指先が、すでにぬるぬるになった性器の根元を握る。長い指はその先の、痛いほど張り詰めた睾丸をゆるりと撫でた。 「ひ、あふ、」 近藤さんはおれの頬をねとりと舐める。そのざらざらした舌の感触、熱の篭った息の匂いが汗と黴臭い空気とまざって鼻腔からおれの脳髄を襲う。 ぐずぐずとひどい音が腰の下から聞こえる。近藤さんと抱き合うとずっと精液が漏れているような痺れが下半身を包む。オナニーなんかとは比べ物にならない、度の過ぎた快感に気が違いそうになる。彼と初めてセックスした日から、きっとずっとおれの頭はおかしくなっているに違いない。 キスというには荒々しいそれ。呼気と唾液をすすり、鼻で甘えたような声で啼く。 「んふ、う、ン」 唇が音を立てて離れると、ふ、と近藤さんが息を呑んで、それからおれのスラックスに手をかけたので、膝を上げて抜きやすいようにする。 すぐに近藤さんの身体がおれの裸の腿に割り込んできて、汗で湿ったシャツの感触に期待が、厭が応にも煽られる。 近藤さんはポケットをごそごそ探って、ムードもなくんん、と首をひねった。 「トシ、なんか持ってる?」 潤滑油のことを聞かれているのだ。おれはかぶりを振った。 「……らねえ、」 「え、」 「い、から、はやく、ッ」 空いているほうの手首を取って後孔へと導く。おっかなびっくりそこに指先を当てると、近藤さんはため息を吐くみたいに漏らした。 「柔らけえ、」 そう、さっき、もう待てなくなってトイレで。オロナインぶちまけて。 「自分で慣らしたの」 問われて顎を背け、おれは小さく頷いた。羞恥で目の前がちかちかする。 「おまえ、ほんと、」 近藤さんが笑っているのかあきれているのかもわからない、ただ次に齎される衝撃への期待で身を硬くする。 膝裏を手のひらが抱えたかと思うと弾力のあるぬめり、焼けてしまいそうな剛直がおれの窄まりを探り当てた。 息つく間もなく、びちびちと濡れた音を潜って近藤さんの幹が侵入してくる。 「うあ、あああ」 入り口のひきつるような違和感も、髄道を雁が押し広げていく愉悦に乱暴に塗りつぶされる。腹の中が燃えるように熱い、こめかみまでちりちりと電気が走る。どん詰まりまでをみっちりと満たされて長い潰れた声が出た。 「あー、あ」 「トシ、声でかい」 しー、と子供をなだめるように囁きながら、近藤さんは気持ちよさそうに眉間を寄せている。ゆるゆると引き抜かれたそれが、もう一度奥をどしんと突いた。 「ヒ、ッ」 前を塞き止められて出すことも叶わず、甘い衝撃が脳天をつく。甘い拷問のようだと思う。シャツの裾から這い上がったもう片方の手が乳首に爪を立ててまた新しい波に飲み込まれる。 「ひゃ、ア、う」 息も絶え絶えに、揺すり上げられながら近藤さんのシャツの袖を握り締めていると、 みしみしとと頭上から足音が聞こえた。 「げ」 近藤さんが身をすくませた、それすら刺激になっておれは呻く。 「あ、ひ、んう、」 「ばっ」 聞こえちゃうでしょ!と乱暴に口をふさふがれて、くぐもった自分の声にも興奮してしまう。抉られたところが裏から快感中枢をダイレクトに焼いて苦しい。 「あれ、今なんか声しませんでした」 「ギャ!やめろよ!オバケとかそういうの禁止! ただでさえこの校舎古くて怖いんだから、と男の声が引きつる。 「禁止とか意味がわかんないです先生」 どっちもどこかで聞いたことがある声だった。そう教室で。 ああでももうどうだっていい、何も考えられない。 口に押し付けられた近藤さんの手に力が入る。唇から唾液が漏れてすべるので、何度も当てなおす仕草、手のひらの汗を味わう。微かにしょっぱい。 動かない楔が粘膜越しに、どくどくと脈を伝えてくる。じっとしていれば形がつぶさにわかるようで、それだけでおれの内部はずくりと疼く。 そのうち外の会話はだんだん遠ざかった。おれはその間に、近藤さんの腹に思い切りぶちまけてしまっていた。 すっかり音が聞こえなくなると、ふう、と大きく肩の力を抜いて、視線を下に落とした近藤さんは目を丸くした。 「何、トシ、いまので出ちゃったの?」 胎を犯すそれがぐうと勢いを取り戻し、意地悪く口の端が持ち上がる。 「、ゥアアア」 もう頭のなかはぐずぐずで、下りてきた近藤さんの舌を必死で追いかけながら裏返った声で善がった。 「ひゃ、ア、い、イ、いっちゃ、ア」 近藤さんの硬い切っ先がおれの一番奥をめちゃくちゃに突いて、視界が真っ赤に染まる。どれだけ責め立てられただろう。おれの声が枯れ切ったころ、深くでどぷり、と溢れる蜜を感じて、おれの性器を握る近藤さんの手が緩んだ。 「う、ぐ、」 精管が痛いぐらいに痺れて、勢いよく噴出す粘液。その強烈な開放感に、下肢が千切れてしまったかと思った。 それが抜かれると空洞ができてしまうのが惜しい。物欲しげな顔で見上げれば近藤さんは困ったように笑っておれの前髪をかきあげた。 大きく息をついて隣に座りなおすと足を伸ばす。上体をこちらへ傾けて、びしゃびしゃになったおれのシャツの裾をつまんだ。 「あーあ、こんなべたべたんしちゃって」 ティッシュ持ってない、どうしよ。とぼやくので、おれはからからの喉で気だるく答えた。 「…、のへんになすっとけば」 ゴンゴン、と乱暴に戸がたたかれたかと思うと、ギィときしんだ音を立てて開いた。ぺっ、と放り込まれたのはポケットティッシュだった。 注ぎ込んでくる明るさに瞬く。固まっている近藤さんの視線の先、開いた戸の隙間にメガネのレンズがちかりと光った。 「盛るのは結構ですけど」 そんな体育用具使いたくありませんから、なすんないでください。HRで議題を読み上げるときと同じ抑揚でメガネの声が言った。そうか、さっきの声は銀八とこのメガネか。 「しししししんぱちくん」 暗がりでもわかるぐらいに真っ青になった近藤さんがどもりながらメガネを呼ぶ。 「ゴミもちゃんと持って帰ってくださいね」 メガネはブリッジを持ち上げてそれだけ言うと背中を向けた。 おれとしては別にばれたところで痛くも痒くもない、っていうか近藤さんとおれがこういう仲だってことメガホンもって学校中に触れ回りたいぐらいなんだ。特にこのメガネの姉貴には釘を刺しておきたいから考えて見たらちょうどいいじゃねえか。 ガン、と戸を全開にして近藤さんが叫ぶ。 「こ、これ言わないでね、お妙さんにはーッ」 「言っていいぞメガネ!くわしく!!」 メガネは振り向かずに手をひらひらと振った。 「起こった事実だけを正確に伝えます」 おれの勝ちだ。おれは肩を落として這い蹲るぱんついっちょの近藤さんを尻目に、下半身は全裸のままガッツポーズを取った。 100514 +++++++++++ (企画お題・『先生ー!バナナはオカズに入りますか?』『3Z』) ご協力ありがとうございました!!^^ こんどうさんのバナナは主食です(土方の) |