遠吠え(コノハナ作品※山×土)


「……は、……ハッ」

荒い息づかいに辟易したような風情で、土方は天井を見上げた。彼が顎を上向かせた本当の理由は、そろそろ終わりが近いからなのだということを山崎は理解していた。山崎は目の前のものを舐めることに夢中で、ろくに土方の顔など見ていなかったが、長い髪に絡んだ土方の指がそれを教えてくれた。最初はただ躾けるためだけに置かれていた指が、今では髪を縋るように掴んで、小刻みに震えている。

「……ん…っ」

声を殺そうと、土方が自分の唇を噛んだ。

微かに漏れた高い掠れ気味のそれに、山崎の耳は鋭く反応する。どこが一番感じるのか、どう舐めたら喜んでもらえるのか、探りとろうと必死だった。犬は飼い主の言葉ではなく、声に反応してその意味を悟る。怒っている声、褒めてくれる声。そして今は、感じている声。言葉では嘘をつけても、声は嘘をつけない。それが快楽を感じているかどうかを示すものであるならば尚更だ。

「…ァ、ア」

ちゅう、と音を立てて先端に吸い付いた。滲み始めている露を吸い上げると、たまらない、とでもいうような声を土方が漏らす。尻が僅かに畳から浮いた。

行為を始める時点で、まんべんなく肌に塗り込めたバターは既に溶けて肌から零れ落ちている。油っぽい、塩からい液体は内股を艶やかに塗らし、畳に落ちて染みを作っていた。それを丁寧に舐めとり、汚れを清める口実で股間に顔を埋める。山崎は口元から鼻先まで、見事にバターで汚れていた。髪が頬に張り付き、シャツの襟元まで油と唾液で濡れていたが、拭い取る事はできなかった。

「…飲ませて、ください」
「……山崎…ッ」
「出して、…土方さ……ん」
「…ア……うっ、…」

飼い主の足に鼻先を擦り寄せる犬猫のように、山崎の鼻先が土方の陰毛の間で動く。深くまで顔を埋めるたいのだと意思を主張するように、生え際の肌を甘く噛んだ。びくり、と土方の下腹が震えて腰が浮く。その隙を逃さず片方の肩を押し込み、自分の顔と首で土方の太腿を広げさせた。

「この、…!……駄犬…が」

飼い犬が無体な体位を強いた事に対して、腹を立てたのだろう。土方が唸るように山崎を罵った。放っておけば上に乗ろうとする、どうしようもない発情期の犬。そんな男をしつけるために、土方は山崎の両腕を背後で一纏めに括った。手首は手持ちの手錠で。それだけでは心許ないので、親指も輪ゴムで一纏めに縛ってある。指先の付け根はきつく戒められ、今では爪先が紫に変色していた。既に感覚もないだろう。それでも山崎は何も言わず、嬉しそうに飼い主の股ぐらを舐めている。

「…もっと……」

譫言のように山崎が呟いた。
広げさせた足の間に顔を押し込み、睾丸まで口に含んで舐め転がす。丁度溶けたバターが袋の皺のあたりに溜まっていた。それを丁寧に、舌先で広げて拭っていく。最早バターの味がしなくなっても、構わず口の中で転がし続ける。舌先で舐めて押しつぶし、唇で熱心にしゃぶった。押し出されたようにつぎつぎと先走りが漏れてくると、うれしくて仕方ないという様子で山崎はそれも舐めた。

最早山崎の股間は張りつめきっており、制服の下で苦しいほど育っていた。土方が声を漏らし、肌を震わせ、山崎を罵る度に発情して膨れていった。物わかりの悪い犬は、何度も飼い主に叱られる。それを分かっていて、同じ失敗を幾度も繰り返した。肌を強く噛む、陰毛を噛み抜こうとする、飲ませてくれとしつこく請う。

その度に体のどこかを蹴られ、そうされる度に精器は固くなっていった。

「……ァ、…で、る…っ、…」

ぶるりと土方の下肢が痙攣し、駆け抜ける射精感に目を閉じた。山崎は幾度か教えられた通りに、足の間から体を引いた。精液は山崎の顔を少し掠め、後は全て畳の上に落ちた。全て出し切ると、脱力した体をしどけなく柱に凭れさせた土方が足を上げる。その足は山崎の頭の上に下り、白い体液で汚れた床に口付けるよう要求した。逆らわずに素直に「伏せ」をする犬に、満足そうに土方が笑う。

「起きろ。…撫でてやる」

その言葉に、がばりと勢いよく山崎が体を起こした。

撫でてほしい場所を示すよう、床に尻餅をついて足を広げる。その足の間に、土方の足裏が触れた。決して愛撫らしい動きはしないそれに、しかし山崎は満足そうに喉を鳴らして吠えた。

「…う、……ああ、あ」
「うるせぇ」

声が響いて嫌だと、土方が山崎の口の中に手近な布を銜えさせる。先刻土方が脱ぎ捨てたシャツを噛みしめて、山崎が果てたのは、それから数分後のことだった。