青春フィルソーバッド







胸で先生の身体をフェンスにおしつけるようにしたら、すぐにがくんと腰が崩れた。
追いかけてしゃがみこむ。膝立ちになって、先生の腿の上に乗り上げるように座った。
呼吸がままならないのか、あくあくと口を開く。無意識だろうけど、それでも僕の舌を追ってくる。ざらりとした感触。
あ、やばい。なんかムズムズしてきた。
上唇を軽くかんで顔をずらす。
ちゅ、と水音が立って唇が離れて、ぼうっとした目がぱちぱち瞬いた。
挑発するみたいに口の端で唾液をすくってみせると、正気に返ったみたいに眉が寄った。元々上気していた頬がこれ以上ないくらい真っ赤になる。
「も、いいだろッ、どけよ…!」
「えーとそのつもりだったんですけど」
僕は頭をかいてみせた。先生は怪訝な顔をして僕を見て、はっとしたように僕の下半身に目を遣って、声もなく叫んで、思い切り上半身を仰け反らせた。フェンスががしゃんと鳴る。
「ななな何オマエ、オレでコーフンしてんの、新八くんそういう趣味だったの?!」
「不本意ながら僕も今初めて知りました」
ほんとに不本意なんだけどでも勃ってるものは仕方ない。それに、
「!」
案の定、膝頭でこすったら、先生のも大きくなってた。
「お互い様じゃないですか?」

どうせならはやいところ、行き着くところまで行ってしまえ、と思った。立ち止まったり考えたり合わない辻褄合わせたりしてみたってどうせうまく行くわけない。
ベルトをガチャガチャやりだしたら先生は息を呑んだ。
「しん、ぱち、やめ…っ!」
なんだかんだ云って抵抗は口だけだった。逆上してて僕を突き飛ばす事にも思い至らないだけなのかも知れないけど。
下着越しに張りつめたものを握り込んだら、切羽詰まった声があがった。
「シャレん、なん、ね…」
うめいてのどをさらすのに、僕はひどく興奮していた。
何故だかわからない。五感が全て快感と直結してるみたいに働いてるんだ。



物理的に入るか心配だったけどポケットを探ったらオロナインがあって、それで結構どうにかなった。
力を入れたら先生がすぐに出してしまったから、ちゃんとセックスできたとは言い難いかもしれない。
けど、ぎりぎりのとこでぎちぎちに、すごくぎこちなく繋がったからこそ、ああここがひとつになれる限度なんだな、って判ったし、
ここが限度なんだ、って思ったら、次の瞬間僕も射精していた。






すこし軋む腰にいてて、と云いながら、フェンスに手を付いて立ち上がった。
立ってみるとそう大したことはなかった。ティッシュで滑りをすくって身支度をさっさと整える。

一方先生はまだぱんつも半分下ろしたまんまだ。膝を抱えて血の気のない顔色をしている。
僕はいい加減苛立って、使いさしのポケットティッシュを投げつけた。
「いつまでそこでそうやってるんスか」
「PTAにどやされる…」
ぼそぼそ呟くのに、僕は鼻で笑った。
いつもそんなことちっとも意識してないくせに。あんたの口からPTAって初めて聞いたよ。

「男の癖にグズグズ云わないでください」
犬にかまれたとでも。と云いかけて、あ、コレ確かにゴーカンする側のセリフだと自分でも思った。

「マジで犯されるかと思った…怖かった」
「イヤそれはいくらなんでも」
ナイのかな。どうなんだろう。わかんない。ノリによるかもしれない。
っていうか明確にこうする、とかこうなる、みたいなビジョンがあったわけじゃないんだ本当に。
アナルセックスだって知識でわかってただけだし、それだって随分現実味に欠けたものだった。
まあ殆どがその場のノリとかイキオイとかそんなかんじだった訳で。


「いいからぱんつはいてください」
僕に云われてズボンはノロノロ上げたものの、それ以上ベルトを止める事もなく、一向に立ち上がる気配がない。
こうやって駄々をこねたとしてもなんにもならないじゃないか。僕に何をして欲しいって云うんだろう。
謝って欲しいなら謝るし、もうしたくないっていうんならもうしない。PTAがどうのって云ったって、もとより教師生命を絶ってやろうなんて気はないんだし、第一僕の社会的立場まで危うくなるんだから公になんかするわけない。
どっちかっていうと痛かったのは僕の方なんだから、ブツブツ言われる筋合いなんかないと思うんだよな。


「僕もう帰りますよ」
痺れを切らして元来たドアの方に足を向けると、慌てた声に引き留められた。
「待て待て!」
きょとんとして振り返ると、先生は口をあーとかうーとかいう形にして、それから観念したみたいに項垂れて云った。
「…立てねーんだよ」
こっちに腕を突き出して、起こして、というジェスチャーをする。
僕は大袈裟にため息をついてみせて、それから自分より一回り大きい体をひっぱって起こした。
上手く歩けないみたいだったから仕方なしに肩を貸す。ふらついた足取りを支えて歩き出した。



階段へ続くドアを開けたとき、ものすごく小さな声が頭の上でぼそっと、責任取ってくださいよチキショーと云った。
僕は少し考えて、先生のほうを見上げて、難しい顔で至極真っ当だと思われる返事をした。
「取れない責任は取れませんよ」
先生は至近距離で、ものすごく苦いモノを食べた時みたいに顔を歪めて見せた。
「…オマエなんかキライだ」
でもそのせりふは降参、っていうのと似たニュアンスに聞こえたから、
「それはどうも」
僕は吹き出しそうになるのを堪えて肩を震わせた。







モドル